2019年07月23日
家庭教師日記② Bくん
私が出会ったBくんは、
その時、留年している高校生でした。
そして
「死にたい」が口癖でした。
「どうせ生きてても意味が無い」
会う度にそう言っていました。
高校も辞め、新たに入り直した単位制高校の単位も取れず、進級さえできていませんでした。
家庭にあまり恵まれなかったらしい彼は、
荒れて家の物を壊したり、深夜徘徊したり、
骨が折れる程の喧嘩をして帰ってきたりしていました。
また、中学の勉強さえもほとんど出来ておらず、
まず中一の正の数・負の数から教えていくことにしました。
とりあえず興味を持ってもらうために、お手製のプラスマイナスカードを作り、それでゲームしながら加法減法を教えていきました。
また、無駄に色々な話をしました。
その話の中で、彼は幼い頃から祖母の看病のために病院通いばかりしていたことがわかりました。
一見すると、髪もまっ茶色で、尖っているし、荒れてるし、
死にたいとか死んだ方がマシとかすぐ口にして、祖母が嫌いだということを言うような子でしたが、
実はすごく祖母のことを想っていて、「死」に対して色々な感情を持っている子なんじゃないかと思いました。
それをなんとか仕事にいかせないか?と思いました。
「Bくんさ…医療従事者になってみない?
おばあさんを1番そばで見てきたからこそ、Bくんにはわかることや、やれることがあるんじゃん?」
私が家庭教師の先生を失って、
自殺未遂までした後に、
親友から"ちえこなら家庭教師できるでしょ。ちえこだからできるでしょ"って言われたあの言葉を思い出していました。
Bくんは一瞬私の目を見た後、下を向いてしまいました。
しかし、一瞬私の目を見た時に、目の輝きがあったのを見逃しませんでした。
私 「とりあえず病院とかに就職する気あるなら高校卒業まで付き合うよ」
Bくん 「あはは!もう無理じゃね?!オレもうすぐハタチなのにまだ高1の単位さえ取れてないんだぜ?」
私 「なんで?いけるっしょ。」
私はよく、その生徒その生徒に合わせた話し方をします。
"いけるっしょ"なんて言いながら彼の目をしっかり見据えて言いました。
しかしBくんは「考えとくよ」と言いながらまたいつもの雑談
に戻してしまいました。
それから数週間後。
Bくん 「せんせーあのさ…オレ…とりあえず高校卒業だけはすることにしたわ。医者とかになれる頭はないけどさ、病院で働くとかはできるでしょ?それには高校卒業の資格がないと色々きびしーらしーからさ…」
私 「まじ?いーじゃん!じゃあ最短で卒業できるように頑張っちゃう?すごい大変だと思うけど」
Bくん 「うん。先生、オレこれから毎日何時間勉強したらいいかな?」
それから彼はみるみる勉強するようになりました。
6時間ぶっ続けで授業したりもしました。
そして最短で単位制高校の単位を取得して、卒業。
見事病院の事務に就職しました。
残念ながら、おばあさんはその後、病状が悪化して亡くなってしまいましたが、その時、彼が泣きながら私の携帯に電話してきた時に、
"ああこの子はもう大丈夫だな。死にたいって言わないな。"と思いました。
命の大切さ。生きる意味。勉強することの意味。
色々なことを気付きながら生きて欲しい。
気付かせることは簡単なことではありません。
本人次第です。
でも、それを少しお手伝いすることは出来る。
さらに最近、Bくんから結婚したと報告をもらいました。
なんと嬉しかったことか!!
どうかこれから新たな家庭を築き、さらなる"命の大切さ"を学んでいって欲しいと思います。
それではまた(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)
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